「自己破産したもん勝ち」は危険!デメリットとした方が良い人とは?
債務整理の中でも、借金減額効果が高い「自己破産」。裁判所から免責許可が下りれば、借金はゼロになるでしょう。「したもん勝ち」と感じる方も多いのかもしれません。
とはいえ、自己破産にもデメリットはあり、その特徴や性質をしっかりと理解しておかなければ、思わぬ落とし穴にハマってしまう可能性も。
借金で悩んでいる方に知っておいていただきたい債務整理の基礎知識や、自己破産する上での注意点をまとめます。
目次
自己破産を含む債務整理とは?法的に借金減額できる手続きの特徴やメリット・デメリット
本当に自己破産はしたもん勝ちなのかどうか判断するため、まずは債務整理の基本について確認しておきましょう。
債務整理とは、法律で認められた借金整理方法です。借金が増え過ぎて返済できなくなった場合でも、債務整理手続きをすれば、無理なく返済できる程度まで減額できたり、返済そのものを免除されたりするでしょう。
そんな債務整理には、主に以下のような手続きがあります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
それぞれの特徴やメリット、手続きできる人の条件は以下のとおりです。
【任意整理】裁判所を介さずに手続きできる唯一の債務整理です
任意整理は、債権者(金融業者)と債務者(お金を借りている人)が直接交渉し、新たな返済条件で和解する手続きです。今後発生するはずだった利息部分をカットし、元本のみを確実に返済できるようにするための手続きです。
任意整理するためには、元本を確実に返済できるだけの安定した収入が必要です。アルバイトやパートでも、返済可能と判断されれば手続きできます。
【個人再生】裁判所に再生計画案を提出し認めてもらい進めていく債務整理の方法です
個人再生の認可が下りれば、利息分だけではなく元本分を含めて借金総額を大きく減らせるでしょう。
一方でデメリットは、手続きが複雑で時間がかかること。費用も高めです。また最低弁済額が100万円なので、借金額が比較的少ない人にとっては、あまり意味がありません。
任意整理と同様に、手続き後に確実に返済できるだけの、安定した収入が求められます。
【自己破産】裁判所に破産申立をし、許可されれば借金がゼロになる債務整理の手続きです
自己破産は、裁判所に破産の申し立てを行い免責許可を求めます。許可が下りれば借金はチャラになるため、手続き後の返済は必要ありません。
自己破産できるのは、支払不能状態に陥っていると判断される場合のみ。収入に対して借金額が大きすぎる、収入がないといった場合に手続きできます。
このように、債務整理手続きには三者三様の特徴やメリット・デメリットがあります。
「自己破産したもん勝ち」という言葉を耳にすると、「そのほかの債務整理を選ぶのは損なのでは…?」と感じる方もいるのではないでしょうか。
それぞれの詳細情報を確認の上、冷静に自分の借入状況にベストな債務整理の手続きを見極めることが大切です。
「自己破産したもん勝ち」と思われがちな3つの理由
上で説明したとおり、3つの債務整理方法には、それぞれ異なるメリット・デメリットがあります。
では、いったいなぜ自己破産ばかりが「したもん勝ち」と言われるのでしょうか。
それは、
- 借金返済義務がなくなるから
- 法律で認められた手段だから
- 回数上限が定められていないから
などが考えられます。3つの理由について解説します。
1.借金返済義務がなくなるから
3つの手続きの中で、唯一自己破産だけが「手続き後に返済が必要ない」方法です。返済負担だけに注目すれば、それぞれの手続きの差は一目瞭然でしょう。
個人再生で「100万円」にまで減額されれば、3年間で返済する場合の月額は
約2万7,000円に。自己破産すれば借金は「0円」で、返済負担はなくなります。
今まさに借金返済に困っている方にとって、「返済がなくなる」というメリットは、非常に大きいでしょう。
また「借金が返済できないほど膨らんでしまっても、自己破産すればチャラになる」という認識から、「自己破産=したもん勝ち」といったイメージを抱く方も多いようです。
2.法律で認められた手段だから
自己破産は、法律で認められた合法的な手続き方法です。
自己破産で借金をチャラにしたからといって、罪に問われることはありません。またその事実が戸籍に記載されたり、選挙権がはく奪されたりする恐れもないのです。
自己破産すれば、何百万円もの借金を抱えていてもゼロにできます。その効果が大きいからこそ、「何か大きな罰則を与えられるのでは…」と不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
3.回数上限が定められていないから
自己破産は破産法という法律で定められた手続きです。
借金減額効果が非常に高い自己破産ですが、実は法律には、その上限回数は定められていないのです。一定の条件さえ満たしていれば、理論上は何度でも手続き可能。
「また借金が増えてしまっても、自己破産すれば大丈夫」という安易な考えのもとで、「したもん勝ち」と言う方もいます。
自己破産したもん勝ちは誤解だったり自分はそう思わない可能性も!7つのデメリット
「自己破産したもん勝ち」と考える理由に目を向けてみると、「なるほど一理ある」と思う方も多いのかもしれません。
しかし自己破産がもたらす具体的なデメリットに注目してみると、決して「したもん勝ち」とは言えない状況も見えてきます。
「したもん勝ち」とは言い切れない、7つのデメリットを解説します。
1.一部を除いて財産を没収される
最初に紹介したとおり、自己破産すると、一部を除いて財産を没収されてしまいます。これは、少しでもお金に換えて債権者への支払いに回すためです。
自己破産後も自分のもとに残せるのは、以下のような自由財産のみです。
- 99万円以下の現金
- 破産手続きが開始して以降に入手した財産
- 差押禁止財産
これらの財産以外については、原則的に没収されてしまいます。家や車も例外ではありません。持ち家を失えば、引越さなくてはいけなくなります。
2.ブラックリストに登録される
自己破産すると、その情報は個人信用情報に「事故情報」として登録されます。手続き後の一定期間、信用情報に関する審査通過は難しくなるでしょう。
ブラックリスト登録により、制限されるのは以下のような行動です。
- 新規でローンを組む
- クレジットカードを新たに発行する
- 手持ちのクレジットカードを使用する
- 保証人になる
- スマートフォン本体を月賦購入する
- 賃貸住宅契約時に家賃保証会社を利用する
新規ローンとは、消費者金融からの借入だけではなく、住宅ローンやカーローンなど、銀行からの借入も含みます。たとえ教育ローンであっても、契約は難しいでしょう。
またクレジットカードの停止に伴って、以下のような影響も出てきます。
- ETCカードが使えない
- 公共料金のカード支払いができない
- ネットショッピングがしづらい
すでに生活の一部として浸透しているものだからこそ、その影響は決して少なくありません。不便な生活を強いられてしまうでしょう。
ちなみにブラックリスト登録は、自己破産だけに限ったデメリットではありません。任意整理や個人再生を選んだ場合でも、一定期間のペナルティは覚悟する必要があるでしょう。
ただし自己破産の場合、任意整理や個人再生よりも、登録期間が長めです。
手続き名 | CIC (株式会社シー・アイ・シー) |
JICC (日本信用情報機構) |
KSC (全国銀行個人信用情報センター) |
---|---|---|---|
任意整理 | 5年 | 5年 | 5年 |
個人再生 | 5年 | 5年 | 10年 |
自己破産 | 5年 | 10年 | 10年 |
たとえば25歳で自己破産した場合、ブラックリストによる影響は35歳前後まで継続することに。
30代になれば、結婚や育児など、新たなライフステージを迎える方も多いでしょう。ブラックリストに登録されていれば、住宅ローンや教育ローンを組むことはほぼ不可能です。
3.すべての債務が免責されるわけではない
「自己破産=すべての返済が免除される」と思っている方も多いですが、実際にはそういうわけでもありません。
自己破産で免責される債権のことを、「免責債権」と言います。一般的な消費者金融からの借入や住宅ローンなどは、こちらに分類されるでしょう。
一方で、「非免責債権」については、たとえ自己破産をしても返済義務が残ってしまいます。
- 滞納した税金
- 国民健康保険料
- 損害賠償金
- 生活費用や婚姻費用
- 養育費
- 罰金 など
これらの支払いは、たとえ自己破産しても免除されないので注意してください。
自己破産後に支払いが難しい場合、分割での支払いに応じてもらえるように交渉するなど、個別での対応が必要になります。
借金のうち、非免責債権の割合が大きければ、「自己破産をしても思ったより生活は楽にならなかった!」という事態にもなりかねません。
4.ギャンブルや浪費が原因の借金は免責許可が下りない
自己破産で免責許可を得るためには、一定の条件をクリアする必要があります。免責を許可しない条件として掲げられているのが、「免責不許可事由」です。
借金の理由がギャンブルや浪費の場合、免責不許可事由にあたります。たとえ自己破産の申し立てをしても、免責をもらえない可能性もあるでしょう。
5.自己破産費用は決して安くはない
裁判所を通じて行う自己破産手続きは、決して簡単ではありません。裁判所に求められる書類を正確に準備し、その都度必要な対応を求められるでしょう。
こうした作業をサポートしてもらうため、自己破産手続きは弁護士に依頼するのが一般的。この場合、裁判所費用とは別に、専門家報酬が発生します。
自己破産する場合の費用相場は以下のとおりです。
裁判所費用 | 約3万円~50万円 |
---|---|
専門家費用 | 30万円~50万円 |
裁判所費用に差があるのは、どういった事件として扱われるのかによって、金額が違ってくるからです。管財事件で破産管財人が選出されれば、その報酬のために多額の費用が加算されます。
専門家費用は事務所によって異なりますが、決して安くはありません。支払いに不安がある場合は、分割払いに対応しているところを探してみてください。
6.2回目以降の自己破産は非常に厳しい
先ほどお伝えしたとおり、自己破産に上限回数はありません。理論上は何度でも可能。しかし現実には、2回目以降の自己破産は非常に厳しいでしょう。
2回目以降の自己破産は、前回の手続きから原則7年が経過していなければいけません。また前回と同じ理由では、「反省していない」とみなされ免責許可が下りないでしょう。
また2回目以降の自己破産は、一般的に管財事件として扱われます。同時廃止事件と比較すると手続きは複雑で、また必要な費用も高くなります。
7.保証人や連帯保証人に迷惑をかける
自己破産すれば、自分自身は借金の返済義務から免れられるでしょう。
しかしお金を借りる際に保証人や連帯法証人を設定していれば、債権者はそちらの方からお金を回収しようとします。多大なる迷惑を掛けてしまうでしょう。
連帯保証人や保証人も借金の返済ができない場合、一緒に債務整理する必要があります。手間も負担も大きくなってしまいます。
自己破産したもん勝ち!と思える自己破産に向いている人の特徴5つ
自己破産にはさまざまなデメリットがあるからこそ、安易に「したもん勝ち」と判断するのは危険です。
しかし実際に、「自己破産したもん勝ち」という方がいるのも事実。「デメリットがあっても、メリットの方がそれ以上に大きい」というケースが当てはまるでしょう。
自己破産したもん勝ち、つまり「自己破産について積極的に検討したい人」の条件を解説します。4つの特徴に当てはまる点があるか、確認してみてください。
1.借金を2~3カ月滞納していて、今後の見通しも立たない
債務整理を検討し始めた段階で、「すでに借金を滞納している」というケースは少なくありません。滞納から2~3カ月経過している場合、すでにブラックリストに登録されている可能性も高いでしょう。
つまり、債務整理してもしなくても、「ブラックリスト入り」という状況は変わらないということ。すでに登録されているのですから、自己破産によるデメリットは少なくなります。
2.処分される財産がない
自己破産に特徴的なデメリットといえば、「自身の財産を処分されてしまう」という点です。元々処分されるほどの財産を保有していなければ、デメリットを感じずに済むでしょう。
自己破産を検討するほど借金返済で追い詰められている場合、「100万円以上の現金や預金がある」というケースは少ないのではないでしょうか。
家財道具や車についても、「売却しても大した価値がない」と、処分を免れるケースが多く見られます。
一つだけ注意が必要なのが「持ち家」です。自分名義の不動産があれば、処分は免れないでしょう。「現在そこで暮らしている」という場合も、例外ではありません。
反対に賃貸住宅で暮らしている人は、自己破産をしたからといって、住まいを失うわけではありません。そのままの生活を続けやすいでしょう。
3.生活保護を受給している(もしくはする予定)
生活保護を受給している、もしくは今後する予定の人は、受給したお金を借金返済に回すことはできません。
つまり、手続き後に返済が必要な任意整理や個人再生は選択できません。借金を整理したいなら、自己破産しか道がないのです。
また生活保護受給者の場合、法テラスの民事扶助制度を利用できます。無料で弁護士に相談できますし、専門家費用を立替えてもらえるでしょう。
4.住宅ローンの返済だけでも厳しい
ひと言で借金問題といっても、その実態はさまざまです。
もし「住宅ローンと消費者金融からのローンを抱えているものの、住宅ローンの支払いだけでも厳しい」という状況なら、自己破産を積極的に検討するべきでしょう。
先ほどもお伝えしたとおり、自己破産で没収される財産のうち、もっとも影響が大きくなりがちなのは「マイホーム」です。
「消費者金融の借金が整理されれば住宅ローンは返済できる」という状況であれば、個人再生で家計改善を目指すのがおすすめ。自宅でそのまま生活し続けられます。
しかし住宅ローンの返済さえ厳しいのであれば、住宅を手放さずに済む道は残されていません。どうせ手放すのであれば、借金の負担がもっとも少なくなる自己破産を検討するのがおすすめです。
借金はいくらからがやばいのか?滞納・放置リスクも無視できない!
ここからは、借金に関する基礎知識をお届けします。まず「借金はいくらになったらやばいのか?」という点についてですが、収入の3分の1を目安にしてみてください。
また金額にかかわらず、以下のような条件に当てはまる場合もやばい状況と考えられます。
- 返済のために別の会社から借入を繰り返している
- 借金を返済すると、日々の生活に困ってしまう
- 返済しても元金が減らない
- 闇金からの借入を検討している
家計の見直しで対応できれば良いのですが、自力でどうにもできない場合、まずは一度、プロに状況チェックをお願いしましょう。
借金を返済できず滞納しても、闇金のような厳しい取り立てが行われることはありません。迷惑電話に悩まされることも、暴力を振るわれるような恐れもありませんが、だからといって油断は禁物です。
金融業者側は合法的に取り立てを行いつつ、法のもとで借金問題を速やかに解決しようと動き出します。つまり、裁判や差し押さえに向けた準備が進められるのです。
自己破産にはもちろんデメリットもありますが、借金滞納からの督促、さらには差押さえを受ける場合と比較すれば、積極的に検討した方が良いケースも少なくありません。
自己破産だけではなく、そのほかの債務整理についても視野に入れつつ、具体的な方法について選択してみてください。
自己破産が気になったら、借金相談を含めまずは専門家に相談を
自己破産が「したもん勝ち」かどうかは、それぞれの状況によって異なります。自分の場合はどうなのか気になったら、専門家に相談してみるのがおすすめです。
債務整理に関する相談先には、弁護士事務所と司法書士事務所あありますが、自己破産を視野に入れて検討するなら弁護士事務所がおすすめです。
弁護士事務所では、以下のような点を相談してみてください。
- 自己破産した場合のメリット・デメリットについて
- その他の債務整理を選択できる可能性について
- 自己破産で免責許可を得られるかどうか
- 自己破産する場合に必要な費用
- 債務整理をする場合の今後の流れ
弁護士が個々の案件についてベストな道をアドバイスするためには、借金に関する、できるだけ具体的な情報を用意しましょう。
借入時の書類を揃えて持参するのがベストですが、見つからない場合、自身の記憶や現在の返済状況に関するデータだけでも役立つはずです。
借金減額シミュレーターを活用してみよう!自己破産以外でも借金を減らせる可能性が分かるかも!?
「いきなり専門家に相談するのはハードルが高い」「そもそも相談するべき状況なのかわからない」という場合には、まずは借金減額シミュレーターを活用するのもおすすめです。
借金減額シミュレーターとは、自身の借金の条件をホームページ上で入力することによって、借金を減額できる可能性があるかどうか損暖してくれるサービスのこと。
弁護士事務所や司法書士事務所が運営しているケースが多く、無料で利用できます。シミュレーターを利用して「減額の可能性あり」と出れば、相談のきっかけになるのではないでしょうか。
自己破産=借金0=したもん勝ちでは?と思われがちだがデメリットも大きい!
自己破産は債務整理の中でも、借金減額効果が高い分、手続きで発生するデメリットも少なくありません。
特にブラックリストや財産の没収は、その後の生活に与える影響も大きいと言えるでしょう。
決して「自己破産したもん勝ち」という訳ではないという事を、頭に入れておいてください。
ただし、どうにもこうにも借金が返済できずに困っている場合、ただ滞納を続けるよりも、自己破産を含め債務整理で借金を減らしたりなしにする方が良いケースも少なくありません。
自己破産のメリットとデメリット、両方に注目しつつ、専門家とともに必要な手続きについて検討してみてはいかがでしょうか。